大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和28年(う)645号 判決

論旨は刑事訴訟法第二百十二条第一項に謂う「現に罪を行いまたは現に罪を行い終つた者」とは現に罪を行い、または現に罪を行い終つてその場に在る者を指斥すると主張するけれども刑事訴訟法第二百十二条第一項に謂う「現に罪を行い、または現に罪を行い終つた者とは時間的段階における観念で場所的観念ではないから現に罪を行い終つた者がたとい場所的には犯行現場から些少異つた場所に居たとしてもなおこれを現行犯人として取扱い得るものと云わなければならない。いま本件につき見るのに原審における証人緒方龍起に対する尋問調書中同人の昭和二十七年八月三十一日午後八時頃後藤とかいう人から本署に電話連絡があり水俣第二小学校の近所で酔払いが来て暴れているから直ぐ来て呉れということで詳しい事は判りませんでしたが、私に行つて呉れということでした。そこで丸山巡査と俵田巡査それに私の三人で水俣第二小学校の近所に行きますと中村方の前に一杯の人だかりがしていて見物の人から酔つ払つて暴れたのは渡邊正だと聞き丸山巡査は渡邊を本署に連れて行く様に云いましたが中村方に渡邊は居ませんでしたので私と俵田巡査と二人で渡邊方の方に行きました。するとふらつと渡邊か跣で出て来ましたので私は乗つていた自転車を渡邊の方の前に立て掛け「お前だろう暴れたのは」と云つて渡邊の左手を握り俵田巡査が同じく右手を握つて捕えた旨の供述記載

(中略)

原裁判所の検証調書中被告人渡邊正方は中村末方より東方に約五十五間を距てた箇所に在る旨の記載とに徴すれば原判示緒方龍規、俵田照男の両巡査が判示中村末方に駈付けた時は未だ中村方には多勢の者が集りその直前に行われた被告人の中村末に対する判示暴行事件につき彼此大騒をして居た際であり而かも両巡査は現場に居合せた者より被告人の右暴行事実を聞知すると同時に犯行現場である中村末方かより僅々五十五間位の距離にある被告人前方で被告人を発見したので之を暴行罪の現行犯人として逮捕せんとしたものであることの事実関係を明認できるので右は前に説示した如く場所的には約五十五間と云う些少の差異はあるにせよ時間的段階に於ては現に罪を行い終つた者に他ならない。然すれば暴行罪の現行犯人として之を逮捕せんとした右両巡査の職務執行は正に適法のものと断ぜざるを得ない。

(後略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!